厚生労働省によると、2016年12月31日現在における全国の届け出医師数は31万9480人で、2014年の実績に比べると8,275人増えています。それでもOECD加盟国の中では日本の医師不足が指摘されています。では医師不足解消のために、医師への登竜門となる大学医学部の門が広くなっているかと言えば、必ずしもそうとは言えません。偏差値で見ても定員で見ても医学部の門戸は依然として狭く高い状況にあります。さまざまな受験制度改革の中で、国公立、私立の医学部一般入試もある程度改善が図られていますが、大学受験においては依然として最高峰に位置するのが医学部受験であり、この現実から医学部予備校の存在は極めて大きいものになります。医学部合格を目指す競争は激烈ですから学力、体力、精神力を高め、1時間でも多く学習して点数獲得能力を上げることが重要です。医学部予備校に通う生徒の中には現役の高校3年生はもちろん、2年生や1年生も少なくありません。現役合格がかなわなかった場合、あきらめないのであれば再受験を目指すわけですが、ライバルの中には働かないで受験勉強だけに専念する再受験生だけではなく、社会人もいます。つまり現在働いている人が医学部を受験するわけですが、これには多くの克服するべき課題があります。
中でも最大の悩みは、このまま会社勤めなど働きながら再受験を目指すのか、仕事はすっぱり辞めて受験勉強に専念するのかという極めて現実的な選択です。プレゼンテーション能力やディベート能力など企業人としての経験値を持っていることはプラスの面もありますが、筆記問題の正解率で勝敗が決まる1次試験を突破しなければ社会人のキャリアも役に立ちません。医学部を再受験するのであればそうしたキャリアはいったん横において、一受験生として不退転の覚悟で退路を断つか、働き続けるにしても受験勉強の妨げにならないような態勢を整えておかなければ合格への道は厳しいものになります。医学部予備校の中には、一度社会人を経験した再受験生への対応プログラムをしっかり確立している予備校もありますので、そうした予備校を選択することが重要になります。
文部科学省は近年、医学部受験における入学者選抜方法の改善を図っています。1996年から1999年にかけて設置された21世紀医学医療懇談会の報告では、医学部受験においては小論文や面接を重視して医師としての適格性を重視するよう求める提言がありました。これには理由があります。近年の医療現場では医師のモラルが厳しく問われています。医療行為の透明性と公平性が問われ、高度医療の進化に伴う患者と医師との信頼関係の構築、インフォームドコンセントの確立など、医療現場にとって極めて重要な問題が次々に出ているためです。つまり医師は知識や技術だけでなく倫理観や奉仕の精神など総合的に志の高い人格が求められており、医学部受験にもその意図が反映されています。
もちろん学科試験の成績が良いことは大前提となりますが、医師としての適性や資質を持っているかどうかを判断する2次試験の小論文や面接試験が極めて重要になっているので、受験対策ではおろそかにすることはできません。このことは社会人として働きながら再受験を目指す人にとっては有利に働く場合があります。医学部予備校はこの点はしっかり分析しているので、一度社会人として働いた経験がある再受験生には、学科試験の解答能力の徹底した底上げを図るとともに、社会経験というアドバンテージを生かした2次試験対策をほどこしています。
企業の一員としてさまざまな職種を経験すると、知識や規則だけでは決めきれない難しい交渉や課題に直面し、問題解決のために苦悩する経験を重ねます。新商品や新企画の提案、ネゴシエーションなどが必要な局面を経験します。2次試験で集団面接試験が行われる場合、発言しなければ持論がないと判断されたりコミュニケーション能力欠如を疑われたりしかねません。集団面接は営業系の社会人であれば、社内会議での企画提案や、競合各社とのプレゼンテーションの場などで何度も経験しているシチュエーションと類似した場面ですから、受験勉強しかしていない現役生に比べると企業人としての経験値を生かせます。しかし医学部予備校の中には模擬面接などのトレーニングも十分やっているところもあるので、絶対的優位ではないという自覚は必要です。社会人として経験したことを、医学部受験の小論文や面接に置き換えて、真摯な気持ちで向き合わないと逆効果になることもあります。
大学受験の中でも医学部は別格の難関です。一度や二度の再受験は珍しくないとも言われますが、途中であきらめて社会人として働く人もいます。しかし医師になる夢を捨てきれず再びチャレンジする人も少なくありません。医学部の受験はハイレベルですから医学部予備校に再入学して合格を目指すのが一般的ですが、その場合の心構えや受験勉強のやり方などについてはクリアすべき多くのことがあります。常に考えておくべきことは二点です。第一に社会人としてのキャリアや経験値が生かされるのは2次試験の面接や小論文であり、そこに進むためには1次の学力検査にパスしなければならないということをしっかり受けいれることです。第二に会社勤めをしながら再受験するのであれば絶対的な学習時間が不足するので効率的な学習計画を遂行することです。
医学部予備校も社会人の再受験は学習時間の確保が重要であることは十分承知しているので、現時点で持っている学力を効率的に上積みする学習プランを構築してくれますが、それを100パーセント以上達成しなければ1次試験突破は困難なのだというぐらいの覚悟と集中力が求められます。医学部予備校には社会人の再受験についてのノウハウを持つ講師陣がいますから、綿密な相談と意思決定、途中経過の報告と修正案の協議という、企業人として業務上やってきたことを受験に置き換えて実践していく姿勢が大切です。
現在の仕事を続けながらの再受験であれば、失敗しても従来の生活は破綻しません。そういう意味では退職しないままでの受験はリスクヘッジになります。退職して退路を断つと、再受験に失敗したら再就職活動しなければならないという厳しい現実があります。どちらを選択するべきなのか迷った場合は、医学部予備校の社会人の再受験に強い講師陣に相談するのも一つの方法です。実際問題として医学部を狙う受験生としては大きなブランクがありますし、一から学習をやり直すのは多くの時間を要します。筆記試験で合格圏内に到達するためには、弱点を克服し、得意分野を伸ばし、ハイレベルの得点能力を身につける必要があります。そのための効率的な時間の使い方が成否を決める要因になりますので、サポートするプロ集団である医学部予備校とは常に学習の戦略分析、精神面での強化を図ることが重要です。2次試験に進むことができれば、社会人として実践的な経験を重ねた提案能力、プレゼンテーション能力などが生かせますから、1次試験突破に必要な学力をつけることに最大の力点をおくことが求められます。