医学部入試の実質倍率は国公立で3.8倍、私立で16.4倍という難関です。独学でこの難関を突破できる人はごく少数で、ほとんどの人は医学部専門の予備校や塾に通います。つまり、医学部予備校の選択が合否を左右すると言っても過言ではありません。しかし、数多い医学部予備校や塾の中から、何を基準に、どのように選べば良いのか迷う人も多いのです。
中には、合格率や合格実績を重視して決める人もいます。もちろんそういった実績はとても大事ですが、データの見方に注意が必要です。合格率が高いと言っても、データをよく見れば一人で複数の医学部に合格しているような優秀者クラスの実績だけを強調している場合があります。短期間在籍していただけの人や1科目だけ指導を受けた人でも、合格すれば実績としカウントしている予備校もあります。在籍する生徒が多い大手の学校は合格者も多くなりますが、不合格者も多いので、
全体の何割が合格しているのかを見ることが大切です。
さらに、どこの大学に合格しているかも確認しましょう。私立が多いのか国公立が多いのか、自分が志望する大学に合格した人がいるかどうかはとても重要です。というのも、医学部の入試は国公立と私立はもちろん、大学によっても出題の傾向が全く異なるので、それぞれの大学に合った入試対策をしないと、合格が難しいのです。自分の志望する大学への対策をしているか、自分の理解度に合わせて、丁寧に指導してくれるかどうかが鍵になります。そうした点を知るために、合格体験記にも目を通してみましょう。体験記は良いことばかりが目立つ傾向はありますが、一人一人の努力や受けた指導が具体的に分かるので大いに参考になります。
医学部に入学することは、イコール医師、あるいは医学に関係する道に進むと決めることです。つまり、入学試験であると同時に職業選択試験でもあるのです。医学部予備校で学ぶ際には、入試対策や学力向上だけでなく、医師になるという自覚を持ち覚悟を固めることも考えておく必要があります。この覚悟が十分でなければ、入試のための学習も、入学してからのさらにハードな学習も最後までやり遂げることができません。
学力と覚悟を培うには、予備校との相性が大事です。相性が良いとは、自分の学力を的確に評価してくれ、適性や個性を踏まえたうえで弱点を補い、学力を伸ばしてくれるということです。そしてくじけそうになった時、医師になるという目的を思い起こさせ、励ましてくれるということです。
自分に合っている予備校を判断する基準はいくつかありますが、やはり講師やカリキュラム、指導法が自分に向いているかどうかが大事です。学校や講師が有名だからといって、自分に合った指導をしてくれるとは限りません。一人一人の弱点を見極め、補強して点数を上積みできるように、丁寧に指導してくれることが第一です。大人数のクラスでは、講師やカリキュラムの質が高くても、個人に対する目配りに不満を感じることもあります。疑問点や分からないことを、いつでも質問でき、すぐに答えてくれる体制が大事なのです。自習環境も重要です。自習室がいつもいっぱいだったり、利用時間が限られていたりするとストレスがたまります。さらに自習の合間に休憩、リラックスできる場所が用意されているかもポイントです。医学部予備校を選ぶ際には合格率だけでなく、講師の質や自分にあったカリキュラム、学習環境なども確認しましょう。
医学部予備校は東京や大阪などに集中していて、都市部に住んでいる人は、豊富な選択肢から自分に合ったところを選ぶことができます。さらに自宅から通えるので、これまでの生活を変える必要がなく、食事や洗濯など今までと同様に家族からのサポートが得られ、学習に専念することができます。しかし、近くに自分に合う予備校がない場合は、遠くまで通学する時間がかかり、負担が大きくなります。
自宅から予備校に通うのが難しい場合は、都市部に出て一人暮らしをすることになります。一人暮らしは部屋代、光熱費や食費など、それなりに費用がかかるうえ、家族のサポートがないので、食事や洗濯など全てを自分で行う必要があります。家族を気にせず自由に学習できる反面、自分をしっかりコントロールしていないと生活が乱れたり、他のことに気を取られたりして、学習がおろそかになることがあります。
一人暮らしの不安を解消するには、寮に入ることも選択肢の一つです。ある程度の費用はかかりますが、通っている予備校の近くにある寮であれば、通学によるストレスや時間のロスもなく、食事面でのサポートもあるので生活上の不安がありません。勉強に集中できるうえ、学校が近いのですぐに指導が受けられるというメリットもあります。さらに、同じ志の人たちと交流し、刺激しあえるのでモチベーションを維持するのにも役立ちます。
医学部予備校は合格率や合格実績だけでなく、生活上の利便性や通いさすさ、モチベーションを高められるかなども含めて選ぶことが大切です。